「~に帰命」「~を帰命」考 勤行集和讃

先月、二男の月命日に来ていただいたお寺の方との
お茶飲み話で、
勤行集の「和讃」の中には
「~に帰命せよ」「~を帰命せよ」の二通りがあるね、
という話題になりました。

そのときは「に」でも「を」でも
そんなに変わりはないんじゃないの、
ということで終わりました。

仏教では「さかしら」は排斥されるので
分析すると叱られそうですが、
考えてみました。

   ↓

【用例】
・光暁かふらぬものはなし/真実明帰命せよ
・有無をはなるとのべたまふ/平等覚帰命せよ
・光沢かふらぬものはなし/難思議帰命せよ
・一切の業繋ものぞこりぬ/畢竟依帰命せよ
・三塗の黒闇ひらくなり/大応供帰命せよ

「帰命」は意味の深い言葉です。

辞書にはさらっと「信仰する」などと載っています。
「正信偈」の初めにもあり「命をあげて仏に帰依する・命をあげて仏の教えにつきしたがう」などと訳されています。


「~に帰命」の「に」は、まず
形容動詞の活用語尾という解釈が成り立ちます。

「に」の付いた「真実明」「平等覚」という漢語を
形容動詞の語幹とみなすわけです。
「一心不乱に修行する」「安全に運航する」などの
「一心不乱」「安全」と同じような、
動詞が表す行為を行う際の「状態」を示す言葉になるということです。
つまり、 「真実明」の状態で、命をあげて帰依しなさい。
      「平等覚」の状態で、命をあげて帰依しなさい。 
     となります。

「~を帰命」の「を」は
普通に対象を示す格助詞とみなし
  「難思議」「畢竟依」「大応供」を(求め所として)命をあげて帰依しなさい。
と考えればよいと思われます。

       ↓

「真実明」「平等覚」を「境地」を表現した体言とみなすなら、
「~に帰命」の「に」を
格助詞ととることも可能でしょう。
「場所を示す」「状況を示す」「動作の目的・対象を示す」のうち
どの意味でも成り立つと思います。
 「真実明」の境地、そこに命をあげて帰依しなさい。
 「平等覚」の境地、そこに命をあげて帰依しなさい。 
 「真実明」の境地、そこを(求め所として)命をあげて帰依しなさい。
 「平等覚」の境地、そこを(求め所として)命をあげて帰依しなさい。 

  

「帰命」は梵語のNamoの意訳で、「心から仏を信仰すること」と
本に載っていたりしますが。
日本に入り日本語の文章の中で使われてきた言葉なのですから
「帰」の漢語的な意味も、また「帰る」「帰す」という
和語の意味なども考慮して解釈してよいと思います。
「命」も同様。「生命」だけでなく「運命」「命令」などの意味も
含めて考えるべきだと思います。

 *「帰」の字義の例:
     嫁ぐ。ゆく。戻る。身を寄せる。委ねる。落ち着く。

すると「帰命」は、かなりいろいろに深い意味を探ることが
できる言葉となります。
めいめい、好きなように解釈すればいいと思います。


私としては
「いま自分のところに来ているつもりのいのちを、宇宙の大きないのちの本流(仏法)に合一化させる」
という意味でとらえるのが好きです。
すると、上に挙げた「真実明」「平等覚」「難思議」「畢竟依」「大応供」のどれもを、
「命のなりゆき先としてそこに落ち着く」べき境地というニュアンスでとらえることができます。
そうすると、
「~に帰命」でも「~を帰命」でも、
目指すべき境地を示しているんだから一緒という「平等覚」な解釈ができて楽だと思います。
「を」のほうが、そこを志向するというニュアンスが強いかもしれません。



「帰命」。
懐の深い言葉です。
「帰依」は、これまでに世間で悪用された例が多々あるため
あまりよい印象を持てないのですが
「帰命」は好きです。
あえてこの言葉を選び、伝えてこられた方々の御志が偲ばれます。



2月5日付記
「真実明」「平等覚」「難思議」「畢竟依」「大応供」は全部、阿弥陀如来の別名だと、「観無量寿経」にはあるそうです。(←原文を知らないので未確認。ちゃんと調べてみたいと思います。)
「大応供」の「応供」は「供えに応ずる者」ですなわち僧、それも最上の聖僧を指すようです。それにさらに「大」をつけて、阿弥陀如来を表す言葉にしているのですね。
五つの言葉を、そうやって「ニックネーム」と考えてしまえば、イメージしやすいですね。
信仰の目指しどころなので、「境地」と考えても「ニックネーム」と考えてもやっぱり同じことになりますが。




  







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